最大公約数と最小公倍数の話

最大公約数と最小公倍数についてのお話です。

次を読んで当たり前と思うでしょうか。

正の整数 a bの最大公約数を Gとし, a=Ga' b=Gb'となるように a' b'を定める( a' b'は互いに素な正の整数)。このとき, a bの最小公倍数 L L=Ga'b'と表せる。


素因数分解をイメージして,共通する素因数を集めたものが Gで,残っている素因数には共通するものがなく,公倍数にするために足りない数を補うために残っている素因数,すなわち a' b'をかければよい。・・・ですが,こういうフワフワした話は伝わる人と伝わらない人がいます。私はフワフワした話が好きで度々するのですが,経験上伝わらないことの方が多いです。そういうときは,実際に数字を使って見せると納得してもらえることが多いです。

授業で説明する場合は数字を使って納得してもらいますが,ここでは問題を解く訓練としてあえて証明をしてみます。最小公倍数とは,公倍数のうちで最小のものをいうのでした。 L=Ga'b' a=Ga' b=Gb'の倍数になっているので, a' b'の公倍数になっています。最小であるかどうかが問題です。背理法で示してみます。

証明  Lが最小の公倍数でないと仮定すると,真の最小公倍数 lが存在し,最小公倍数以外の公倍数は最小公倍数の倍数だから L=clとおける( cは2以上の整数)。 l=\frac{L}{c} a=Ga' b=Gb'の公倍数だから

 \frac{L}{c}=mGa' \frac{L}{c}=nGb'

とおける( m,nは正の整数)。 L=Ga'b'を代入して整理すると

 \frac{Ga'b'}{c}=mGa' \frac{Ga'b'}{c}=nGb'

 b'=cm a'=cn

よって a' b'はいずれも cの倍数であるが,これは a' b'が互いに素であることに反する。よって, L=Ga'b'は最小公倍数である。

別の証明

最小公倍数が L=Ga'b'であることを忘れて,初めから最小公倍数を求める方針が次の証明です。

証明  a bの公倍数 lとすると,公倍数 l a=Ga' b=Gb'の倍数だから l=mGa'=nGb'とおける( m,nは正の整数)。 mGa'=nGb'より ma'=nb'の右辺は b'の倍数だから左辺も b'の倍数であるが, a' b'は互いに素だから m b'の倍数である。よって m=kb' kは正の整数)とおける。これを l=mGa'に代入して l=kGa'b'が最小となるのは k=1のとき。よって最小公倍数は L=Ga'b'

最大公約数と最小公倍数の関係

 a bの最大公約数 G,最小公倍数 Lについて, GL=abが成り立ちます。

証明  L=Ga'b'の両辺に Gをかけて GL=Ga'\cdot Gb' Ga'=a Gb'=bだから GL=ab

 a bの値によらず GL=abが成り立つのはちょっと不思議に感じるかもしれません。本当はこっちの話がきっかけでしたが,構成上こんな風になりました。